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トレーニングにおけるケガの原因と予防について

トレーニングにおけるケガの原因と予防について


ライター

運動時、関節や筋肉を適切に使うことで正常な動作を行うことができるのですが、時にケガをしてしまうことがあります。いつものように何気なく意識せずに動かしているつもりでもケガをしてしまうのは何故でしょうか。今回は、ケガについて、その原因と予防について解説します。

私たちの身体は、運動時、関節や筋肉を適切に使うことで正常な動作を行うことができるのですが、時にケガをしてしまうことがあります。

いつものように何気なく意識せずに動かしているつもりでもケガをしてしまうのは何故でしょうか。今回は、トレーニングと背中合わせでもあるケガについて、その原因と予防について解説します。

ケガの要因・原因

ケガの要因・原因

ケガが起こる際に考えられる主な要因は、内的要因と外的要因が大きく関係しています。

 

内的要因

内的要因は自分の身体の機能によって起こる要因のことで”フィジカル・形態・機能・スキル・メンタル・メディカル”、6つの要素があります。

それぞれの意味についても説明しておきましょう。

フィジカル
基礎体力のことで、一般的な例えとして”体力がある、身体が強い、筋肉隆々”など。
形態
その方の体格(体重、体脂肪率、体脂肪量、筋肉量など)とアライメント(立ったときの姿勢など)。
機能
関節の可動域などの”関節機能、筋力や筋持久力などの筋機能、バランス感覚や認知機能”など。神経系機能、全身持久力などの呼吸循環系機能のこと。
スキル
筋トレのフォームや身体の動かし方。
メンタル
緊張や気分の浮き沈み。
メディカル
今までのケガの受傷歴や病気などの既往歴。

外的要因

外的要因には、環境・用具・トレーニングの3つの要素があります。

環境
地面の状況(柔らかい地面や硬い地面)や天候。
用具
シューズやトレーニングに必要な器具。
トレーニング
量、強度、質などトレーニングの要素。

内的要因によるケガについて

このようにケガが起こる場合は、色々な要素が関わっています。

内的な要因で、よく見かけるケースは間違ったフォームで行っていることです。効かせたい筋肉ではなく、関係のない筋肉を使っていることがあります。

また、自分の限界を超えた重量で行っているケースは、身体への負担が大きくケガに繋がりやすくなります。

外的要因によるケガについて

外的な要因は、主に自分ではコントロールできない部分(環境)で、急性的に起こるケガと慢性的に起こるケガに分けられます。

急性的なケガは、何かにぶつかったり、身体の限界を超えた力を発揮をしたり、トレーニングをしている最中に起こるケースです。

もう一つの慢性的なケガは、身体へのストレスが徐々に増し、その負担が蓄積されて起こるケガです。この場合、痛みが出る前に違和感があったり、少し痛みがあったりする場合も多く、普段の姿勢や動き方も大いに関わっているので痛みに繋がる前に対処することが重要です。

ケガをした場合の対処

ケガをした場合の対処

ケガをした場合の対処は、昔からよく聞くRICE処置が基本です。(RICEとは怪我に対する応急処置の頭文字を取ったもの)

  • Rest(レスト=安静)
  • Ice(アイス=冷却)
  • Compression(コンプレッション=圧迫)
  • Elevation(エレベーション=拳上)

※拳上とは
ケガしたところを心臓より高い位置に保つこと

一般的に必ず行うべきことは、必要以上に動かず患部を安静することとアイシング(冷却)することです。アイシングは、氷やアイスパックなどを用いて患部を固定した状態で(圧迫するように)挙上します。

時間的には15分~20分ぐらいが目安です。最初は、冷たさで痛みを感じますが、その状態を我慢すると感覚が徐々になくなっていきます。この感覚がなくなるまでアイシングを継続します。

ケガを受傷した直後は、このアイシングで感覚がなくなった状態から一度元の状態まで戻し、再度アイシングを繰り返し行います。(※凍傷に注意すること

最近は、安静のみの治療では損傷した組織を保護できないことから、PRICE(プライス)と呼ばれる処置に変わってきています。また、近年は急性損傷の早期管理として必要以上の固定・安静は悪影響を及ぼすことが分かってきていて、POLICE(ポリス)という概念も広まりつつあります。

POLICE、それぞれの目的

  • Protection(保護):装具などを用いて損傷組織を保護し、再受傷、悪化を防ぐ。
  • Optimal Loading(最適な負荷):早期に最適な負荷をかけることで最適な組織修復を促す。各組織、部位に対する適切な負荷は専門家に相談の上実施することがベスト。
  • Ice(冷却)疼痛の緩和、異常な筋収縮パターンを改善する。
  • Compression(圧迫)患部の内出血や腫脹を防ぐ。
  • Elevation(挙上):浮腫の軽減を図る。

ケガをしている時のトレーニング

ケガをしている時のトレーニング

結論から言うと、痛みは物理的にカラダが壊れるという警告でもあるので、トレーニングを中断するべきです。痛みを取り除かずにトレーニングを続けるとケガの重症化するおそれがあり危険です。

痛みは、筋肉が硬くなって関節が動かなり、無理な動きを繰り返して組織が壊れるケースと、使わなくてもよい部位を過剰に使うことで、その部位に負担が集中し壊れるケースがあります。

このように様々な原因で組織が傷つくと”ブラジキニンやヒスタミン”といった発痛物質(はっつうぶっしつ)が分泌され、その情報が末梢神経から中枢神経へと伝わり、痛みが自覚されます。

痛みを自覚した状態でトレーニングを行うと、その痛みのある部位をかばった(他の部位を使った)動きになり、効果的なトレーニングは難しくなります。また、狙った箇所への負荷がかけられず新たなケガを招くリスクも伴います。

その他、痛みがとれた後も脳はその痛みのことを覚えいるため、改善した後も代償動作で動くことがよくあります。そのため、”改善した後でもいかに適切な動作を行えるか”、ここを重視してトレーニングを行うことが大切です。

病院か整骨院か

 

ケガをした場合は、基本的には整形外科にてケガの診断をしてもらうことが第一です。

整骨院でも対処してもらうことは可能ですが、正確な状態を把握するためにはレントゲン、CT、MRIなどを用いた診断が必要です。

また、整形外科のドクターはそれぞれ肩専門など特定の部位の専門とするドクターもいるので、痛めた部位によって病院を選択するのもいいでしょう。

 

ケガの多い部位とその原因

ケガの多い部位とその原因

身体の中でケガの多い部位は、肩関節、腰、膝関節です。それぞれ痛めやすいパターンについて説明します。

内容は少し難しいですが、ゆっくり何度も読み返すと理解しやすいと思います。

肩関節

肩関節を痛めやすい原因で多いパターンは、

  • 肩甲骨外転(肩甲骨が開きすぎている状態)
  • 上腕骨内旋(肩が内巻きになっている状態)
  • 胸椎後湾の増強(背中の上部が丸まっている状態)

この3つ大きく関わってきます。

これらの可動性に問題がある場合、その足りない可動性を他の関節や部位で補って動きを行うようになり、その補って動いている部位や関節に負担が蓄積していきます。

腰を痛めやすい原因は、胸椎と股関節の可動性が低下しているケースで、この場合は、腰を反ることで可動性の低下を補ったりします。

しかし、その腰が反ることで体幹の力である腹圧を高めることができず、腰への負担が集中し痛みにも繋がってしまいます。

膝を痛めやすい原因は、股関節と足関節の可動性が低下しているケースです。この場合は、膝関節を動かすことで可動性の低下を補いながら動くようになります。

膝関節は安定性が求められる関節で、その安定性が必要な関節を必要以上に動かすことで膝への負担が増大、負担が蓄積されることで痛みへと繋がります。

ケガの多い部位とその原因のまとめ

このように、可動性が必要な関節の可動性が不足した状態になると、他の部位がその部位の動きを補う形で動くようになります。

また、身体は一部分だけで動いているわけではありません。全身が連動して動いているため、ある一部位に問題があるとその他の部位にも影響があり痛みへと繋がるケースもあります。

予防について

予防について

以上で説明したことを踏まえ、ケガをしにくい身体を作っていくためには必要な要素が大きく分けて4つあります。

1.関節の正常な可動域

上記で何度も説明したように、人間は関節の可動性(MOBILITY)が失われるとその関節をうまく動かすことができない為、変わりに通常使わなくても良い他の関節や筋肉も使って代償して動こうとします。

そのことにより、代償して使われた筋肉に負担がかかり、蓄積して他の部位に問題が発生するため、まずは関節の可動性をしっかりと把握していくことが重要です。

2.関節を自分でコントロールして動かす能力

関節の可動性を獲得できた後、今度は関節を自分でコントロールして動かしていくためのトレーニングが必要です。

この自分でコントロールするには、動かしていない関節は安定させることです。安定、つまり止まっている部分を作ることで動かす部分の動作をスムーズにすることができます。

3.正しい姿勢をキープして動かす筋力

動作を行う際に、姿勢がくずれないよう体幹の筋を働かせます。その結果、身体に負担の少ない動きが可能となります。

動作を行う際に、姿勢キープ(姿勢保持)させた状態で動作を行えるようにトレーニングしていきます。

4.カラダを動かす筋力

カラダを動かす為に必要な能力は筋力です。

これは一般的によく行われているトレーニングなどで筋力をあげていくことができます。

まとめ

トレーニングを日常的に行っている人でも、そうでない人でも身体を動かすということはケガのリスクも伴います。加齢を含めれば尚更です。

ケガをするとトレーニングは勿論、日常の生活にも支障をきたしてしまいます。トレーニングを行っているほどケガには注意し、予防してもらいたいのですが、そうでない人にもケガ予防のために是非参考にしていただきたいと思います。

ケガについては、今後も新しい情報を発信していきます。

カテゴリ:知識
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取材・この記事を書いた人

投稿者・寄稿者
御厨 広志 (mikuriya)

某スポーツクラブのチーフトレーナーを経てジュニア、プロアスリートへの指導業務にも従事。科学的根拠に基づいた指導と機能的で動ける身体作り・痛みを出さない身体作りを得意とするパーソナルトレーナー。


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