解剖学に基づいた正しいお尻トレーニング
今回は最近流行っている「お尻トレーニング」について、解剖学の観点から解説していきます。
目次
流行っているお尻ブーム
パーソナルトレーナーをしていると、よく「外国人みたいなお尻になりたいんです」という声をいただきます。
その一方で、「私は日本人だから海外の人のお尻みたいにはならないんですよね」という声もいただきますし、「お尻のトレーニングをしているのに大きくなりません!」というお声をいただいたこともありました。
理由はこれです、と体や日常動作やトレーニング内容を見ずに断言することはできませんが、解剖学の観点から、お尻とはなんなのか・どういう機能があってどのように動かすといいのかを解説します。
知識がないままやみくもにトレーニングをすると怪我の原因にもなりますから気をつけましょう!
正しいお尻の使い方を理解しよう
機能や動作を理解すると、トレーニング以外での日常生活に変化が生まれます。
週7トレーニングをしても、働いている時間・家事をしている時間・移動している時間にお尻の間違った使い方をしているとお尻は育ちません。
お尻を育てるのが一概に良いとは思っていませんが、私自身自分の足やお尻がコンプレックスだったのですが、今では足とお尻が一番の好きな部分です。
生まれつき綺麗なお尻の人はいない、動かし方で何歳からでも変化する!好きな部位が増えるというのはとても自信になりますよ!
お尻をキレイに見せる筋肉
人間の体で大きい筋肉は、胸・背中・お尻です。お尻には大臀筋・中臀筋・小臀筋・深層外旋六筋・腸腰筋と様々な筋肉があります。
- 大臀筋
- お尻=臀部の中でもっとも大きな筋肉で腰骨の終了する部分(腸骨筋から尾てい骨)から足の靭帯(腸頸靭帯)や足の骨(大腿骨)に向かって存在。
- 股関節の外転、屈曲、内旋、膝関節の伸展などが役割。日常では歩く時、走る時、座る時、立つ時、全てにおいて使っている。
- 中臀筋
- 中臀筋はお尻の上の腸骨翼付近から大腿骨の外側にむかって存在。大臀筋の上部に位置する。
- 機能としては股関節の外転、屈曲、内旋外旋。日常では骨盤の安定に、スポーツ時には横に足をだす際に使われている。
- 小臀筋
- 小臀筋は中臀筋の下に存在。
- 腸骨から大腿骨に繋がっており、機能としては骨盤の安定に役立っている。
- 深層外旋六筋
- 深層外旋六筋は文字通り6つの筋肉を指し、大臀筋のさらに深層部にある大腿方形筋・梨状筋・内閉鎖筋・外閉鎖筋・上双子筋・下双子筋のこと。
- 股関節を外旋させることが主な役割。
- 腸腰筋
- 大腰筋と小腰筋と腸骨筋とのことで、3つを合わせて腸腰筋と呼ぶ。足を上げる(股関節を屈曲させる)際の筋肉のこと。
- 大腰筋は腰回りから足を上げる付け根(胸椎の下と腰椎から大腿骨小転子)に存在。小腰筋は実は存在しない人もいる筋肉。腸骨筋は腸骨といって股関節の上側から足の前側(大腿骨小転子)に存在。
冒頭に述べた外国人と違う点を述べると、外国人は日本人よりも大腰筋が遺伝的に太いと言われています。
(黒人の短距離ランナーの方が足が速い理由も大腰筋が関係しています。)
しかし、国籍の違いではなく、日常で大臀筋を感じない人と感じる人を比較したら、当然垂れたお尻と垂れていないお尻になった、という気がしてなりません。決して生まれつきお尻が垂れているなんてことではないのです。
私自身、お尻の形が四角くて垂れていた(笑)のですが、筋トレを始めてからお尻を使いながら立ったり座ったり歩いたりするうちに丸くて上がっていきました。
今でも多くの方に伝えているのですが、モデルさんは生まれつき足が美しくお尻が上がっているのではなく、たまたまもしくは努力していい使い方をしているのです。
間違ったお尻トレーニング
間違ったお尻トレーニングにならないように注意すべき点は2つあります。
骨盤が安定していない
解剖学的にはお尻の1番大きな筋肉である大臀筋は股関節が15度以上伸展(足を後ろに伸ばす)した時に作用すると言われていますが、骨盤が安定していなければダイレクトに感じることはできません。
つまり、ランジでもスクワットでもデッドリフトでもどちらかの骨盤が前後左右に動いてしまうと、関節や他の筋肉で大臀筋の動きを補おうとしてしまうので怪我につながります。
鏡が目の前にあるようでしたら、ご自身の骨盤が安定していることをしっかり確認しましょう。
重心がずれている
また、よくありがちなのがスクワットのフルボトムから立つ動作やヒップスラルト、骨盤を後傾しお尻をキュッとしめる動作での間違いです。
その動作自体はいいのですが、立った時やお尻をトップにあげている時、膝の上に力は入っていませんか?膝にロックをかけ、重心が前の方に行くと膝関節を傷つけると同時に大腿四頭筋(前もも)を鍛える動作になります。
大腿四頭筋を鍛えたいのであればいいのですが、お尻を鍛えたいのであれば重心の位置は気にすべきポイントです。
そして、重心もとても大事になります。足の外側に重心がのると、大腿筋膜張筋(太ももの横側)が鍛えられ、お尻への負荷が半減するとともに世の中一般に言われる美脚とも離れてしまいます。
骨盤の安定・重心・膝関節のゆるさを注目してトレーニングをしていきましょう。
正しいお尻トレーニングの方法
マシーンの場合
大臀筋であればグルートという膝あたりにパットを当て足を伸展させるトレーニングはとても簡単で、ジムにあるなら使って欲しいマシーンです。
骨盤の向きが正面を向くように意識しましょう。足を上げる側に上半身が向いてしまうと効果が半減してしまいます。
その他、中臀筋はアブダクションで鍛えることができます。外旋(ひざを開く動作)で鍛えられるのは中臀筋のみならず他の臀部も作用しますので、ずっと重さをかけ続けたり、負荷をかけて思いっきり開いたりと工夫してみてください。
フリーラックの場合
スクワット・デッドリフト・ヒップスラスト、全てにおいてマシーンとは違い全身運動となります。
腹圧や初動、フォームが重要になってくるので初心者の方はジムのトレーナーに指導してもらいましょう。
大事なのは下の4点です。
- お尻を最初に感じること
- お尻を体の支点にすること
- 膝にロックをかけていないこと
- 膝とつま先の方向を同じにすること
丁寧にお尻で重さを感じ、お尻でコントロールしていきましょう。前傾と後傾の感覚がわからなければ自重トレーニングにてお尻を感じる動作をしてみると良いと思います。
スミスマシーンでのランジがおすすめ
ちなみに私が最もお尻のために行ったトレーニングはランジです。
スミスマシーンを活用したランジは、目の前に鏡がおいてあることがほとんどなので、骨盤の安定を自身でチェックすることができます。
つま先と膝の方向を揃え、かかとの真上に膝を置き、初動でお尻を感じたらそのまま下がりお尻でそのままあげる。このとき膝の位置が変わらないようにするといいでしょう。
家でも机や椅子を持っていいので自重でトレーニングにすると、スミスマシーンでもフォームがとてもよくなりますよ。
自重でできることは、スミスマシーンでできる。スミスマシーンでできることはフリーのラックでもできる!ぜひ挑戦してみてください。
キレイに見せるための姿勢、コツ
日常で大臀筋を使うことが重要です。
足の裏全体に重心を置き、かかとの上に膝を置きます。この時多くの方がかかとよりも前に膝が位置していることが多いです。
膝をピーンとしている方も多いので、ロックせず、緩い状態でかかとの真上に膝を置きます。かかとを少し踏むとお尻を感じれば正解です。意外に難しいので横に鏡を置いて自分の体を見ながら行うとよいでしょう。
また胸を張り、お腹に力を入れましょう。この姿勢で電車に乗ったりたち仕事をすると、前ももや横の太ももではなく、背面に少しずつ筋肉がつき、前や横についた筋肉はほぐれます。
今までの癖は1日にしてなおらず!すこしずつ体が楽でかつ綺麗になるポジションを探していきましょう。
まとめ
大事なことは「継続」です。お尻があれば、綺麗に見えるだけではなく、筋肉がある=消費カロリーも高いのでたくさん食べることもできますし、背面を使えると怪我のないバランスのいい体になります。
お尻ブームではありますが、トレンドに関係なくお尻はきちんと使えてナンボ!今後のトレーニングに何かしら生きる情報となれば嬉しいです。
健康は手段!日々楽しめますように。
今回は最近流行っている「お尻トレーニング」について、解剖学の観点からお尻とはなんなのか・どういう機能があってどのように動かすといいのかを解説します。