プロが教えるボディビル掛け声マニュアル!意味と正しい使い方
皆様初めまして。駿(ハヤオ)と申します。普段は事務員をしながらトレーニングにいそしみ、ボディビルシーズンにはコンテストに出場したり、観戦したりしています。
選手としては、学生時代に全日本学生選手権で2位、ベンチプレスではジュニア日本記録(ノーギア)を保持していたこともあります。社会人になってからはなかなか成績を残すことが難しくなってきましたが、横川尚隆に『僕よりかっこいい身体をしている』と言わせるという目標をもち日々頑張っております。
自己紹介が長くなってしまいましたが、本日よりトレタスさんでライターとして活動させていただくことになりました。宜しくお願い致します。
目次
盛り上げの要、掛け声
さて、私はボディビルに出場するとともに、観戦する側としてもよく大会を見に北海道や大阪まで行くことがあります。(昨年は同日開催を含めれば10個のコンテストを観戦しました。)
そんな中、近年では”ホンマでっか!?TV”でお馴染みのバズーカ岡田こと岡田先生の各種メディアへの出演、書籍『ボディビルの掛け声辞典』影響もあり、フィットネス業界の関心も高まるに連れて大会への観戦者も増えてきました。
そして、その盛り上がりの要となっているのが掛け声です。
定番の掛け声で言えば、「切れてる!」、「デカイ!」などがあります。大会を見に行ったことがなくてもテレビや雑誌で一度は聞いたことがあるという方も多いでしょう。
この盛り上げの要となっている掛け声ですが、時代と共にアレンジが加えられ、定番のものだけではなく、おもしろい・インパクトのある掛け声もたくさん生まれています。
実は私、駿はJsportsの『筋肉愛!ボディビルかけ声TV』にもかけ声職人として出演しており、最近では恥ずかしながら『掛け声の専門家』と言われることも多くなってきました。
そこで今回は、掛け声の専門家でもある私から、昔からある定番の掛け声と近年新しく生まれた掛け声まで分かりやすく解説します。
今まで意味が分からなかった掛け声も「そういうことだったのか」と理解してもらえると思います。
そもそも掛け声の意味とは?
そもそもなんのために掛け声を叫ぶのか。これには主な理由が3つあります。
1.審査員へのアピール
ボディビルコンテストでは、一度に10人を超える選手が同時にポーズを取ることが当たり前のようにあります。ですので審査員は、同時に10人の選手を短い時間で審査しなければならず、ついつい見落としてしまうことがあるのです。
そこで、自分の応援している選手が審査員に見落とされないよう、注目させる(アピールする)ために掛け声を叫びます。
2.応援
ステージ上で自分に掛けられる声は、自分を応援してくれている人の存在を選手に認識させモチベーションを喚起します。
ボディビルのポージングというのは、一見静止しているだけのように見えますが大変ハードです。特に経験の浅い選手の場合、短時間の審査であっても挫けそうになるものです。
そんな状況でも最後まで乗り切る大きなパワーとなるのが掛け声です。
3.観客が楽しめる、盛り上がる
私がコンテストを観に行くメインの目的は、知り合いの応援です。しかし、大会が白熱してくると観戦中に感極まってしまうことが多々あります。
そういった時に自然と選手を称賛する掛け声が出てきてしまうのですが、これが盛り上げるきっかけになったり、その声を聞くことでより楽しめることにつながります。
これは昨年行われたIFBB PROFESSIONAL LEAGUE JAPAN PRO 2018で、私が掛け声を行っている様子です。見ていただくと、私がどのようにコンテスト観戦を楽しんでいるかが伝わると思います。
せっかく時間とお金を使ってボディビルを見に来ているのだから、全身全霊で楽しみたい。その楽しみの一つとしても、掛け声には意味があるのです。
定番の掛け声
ここまで掛け声を叫ぶ理由について触れました。それでは実際によく使われている定番の掛け声から説明していきしょう。
審査員から選手に意識を向けてもらうためには、
- 選手の番号を叫ぶ
- 選手の場所を明確に叫ぶ
- 何色のパンツをはいているのか、髪型はどうなのかを叫ぶ
といった内容が有効なため、分かりやすい言葉が定番の掛け声として利用されます。
デカい、切れてるの意味
- デカい
- 筋肉がでかい = 大きい、太い、分厚い、広い
- 切れてる
- 筋肉が切れている = 絞れている、カットが深い、ストリエーションが出ている
これらの言葉と一緒に「〇番の脚がでかい!」「赤パンの脚、切れてるよ!」など、体の部位を叫ぶとより効果的です。応用する場合は、
『大腿四頭筋が4つに分かれている!!』
と、セパレート(割れ目)を表現したり、
『切れてる』
よりも、
『バリッバリ!』
という言葉を使うことで同じ仕上がりでもよりインパクトが増します。
また、声をかけるタイミングも重要です。次のポーズに入る間は会場が静かになりやすいため、そのタイミングで声をかけると聞こえやすいです。
具体的には、次のポーズがサイドチェストという胸の厚みを強調するポーズであれば、「さあ次のポーズ!〇番の胸の厚み!外側(広筋)のカットに注目!」というようにポージングする前に叫びます。
おもしろい、インパクトのある掛け声
ここまで紹介してきた一般的な掛け声のほかに、筋肉の部位を何かに例えることで称賛する掛け声があります。
後述する「肩メロン」や「背中に鬼の顔」などがそれで、よくメディアで取り上げられる掛け声でもあります。これらの掛け声を用いると、普通に「デカい!」「切れてる!」等の言葉を使う以上のインパクトを与えることが出来ます。
ただ、実際のコンテストで使うのは難しく社会人のコンテストではほとんど聞きません。
しかし、学生の大会ではこういった言葉を『いかにうまく言うか』の勝負のようなところがあり、おもしろい・インパクトがある声や、定番とは異なる様々な掛け声を聞くことができます。
部位ごとの使い分け
それでは、この『例える掛け声』について、実際にはどのような言葉が使われるのか、部位ごとに見ていきましょう。詳しく書きすぎている点もあるので、分からないところは飛ばしていただいたほうが理解しやすいです。
胸編
- ポッキー挟めちゃう
- 2012年ごろからだと思いますが、11月11日=ポッキー&プリッツの日に、ボディビルダーが胸にポッキーを挟んだ画像をSNSにアップするのが流行りました。
- これは、ある程度以上厚みのある大胸筋でなければできない芸当です。よって、
- 『〇番の大胸筋!分厚いなあ、ポッキー挟めちゃうわ!』
- などアレンジすることで胸の厚みを称賛することができます。
- 胸がケツみてえだ
- 後述する「背中に鬼の顔」と同じく、刃牙(バキ)がネタ元で、大胸筋の厚みと丸みを表現する掛け声です。大胸筋は鍛えていないと膨らみも何もない板のような状態(男性の場合)である一方、ケツ(臀部)は、どんなに鍛えていない人でも2つの膨らみを有しています。
- 大胸筋を鍛え、厚みと丸みが増えていくことで、どんどんケツに近づいていきます。力を入れていない状態での良さを表現できる言葉でもあるので、フロントダブルバイセプスポーズなど、特に大胸筋に力を入れて取ることの少ないポーズで使うと効果大です。
脚編
- ゴリラ(脚全体の太さ)
- 私がテレビで発し、紹介された掛け声に、『脚がゴリラみてえだ!』があります。実際、本当に太いビルダーの脚は人間よりも類人猿に近いのではという錯覚さえ抱かせるもので、そんな脚を称賛するための掛け声です。
- アディダス(ハムストリングス)
- ある程度以上筋量のある選手がハムストリングスを絞り切ると、縦に大きく太い溝が刻まれるようになります。
- 昨年、あるトップ選手がこれを「アディダス」と表現しました。ハムに3本線が入るまで絞るのは大変です。もしそういった選手を見かけたら、遠慮なく
- 『〇番、ハムアディダス!』
- と叫んであげましょう。
こちらの写真は昨年私が大会に出場した時のものです。もっと脂肪が落ちてくると、”adidas”のロゴにどんどん近づいていきます。
- 蝶々(ちょうちょう、ちょうちょ)
- 筋量があり、脂肪が充分に削ぎ落とされた臀部(でんぶ)を称賛するのに使います。豊富な筋量と深いカットが両立された臀部は、まさに蝶々のようになります。
- 臀部もまた、深いカットを得るのが大変な部位で、『蝶々のようなケツ』は選手への最上の賛辞の一つと言えます。アレンジする場合は、
- 『〇のケツ、バリバリ!蝶々みてえだ!』
- と叫んであげましょう。
腹筋編
- 腹筋が〇個
- 絞れた腹筋を表現するのに、6パックという表現はかなり市民権を得てきたと感じます。これは腹直筋が大きく6つに分かれているのがよくわかる様を表した言葉です。
- しかし、ボディビルコンテストに出てくる選手で、腹筋が割れていない選手などほとんどいません。ですので、6パックなどという言葉では何も印象付けにも応援にもならないし気分が上がってきません。
- 私の場合は、
- 『腹直筋が1、2、3…うん?6個じゃ足りない!8個!?いや10個!10パックだぁ!』
- などという表現を使い、ボディビル基準でもレベルの高い腹筋であるということを表現します。
- 扇子
- 本当にバリバリに絞れた選手の腹斜筋は、収縮させると扇子のように見えます。
- これは仕上がっていることが前提の表現になりますので、「切れてる」とのコンボで
- 『〇番の腹斜筋!扇子みたいだ!〇番の鉄扇ならダイヤモンドも切り裂けるぜ!』(鉄扇の切れ味と仕上がりのキレを掛けています)
- の様に使うことが出来ます。
- この写真の赤線の部分が、本当に絞れると扇子のように見えてきます。
蟹の裏
板チョコや洗濯板(絞れた腹直筋に見かけが似ている)、防弾腹筋(厚みを表現)などが有名です。
最近は蟹の裏なんていう表現も出てきました。
腕編
- エベレスト
- 上腕二頭筋の太さ、ピークの高さを称賛する言葉です。かつてアーノルドシュワルツェネッガーは、『アームカールを行う際は、上腕二頭筋が張り裂けるようにパンプし、山になっているようなイメージで行う』と発言しています。
- 彼の中では、本当に上腕二頭筋が実際の山と同じくらいになっているつもりでトレーニングしていたようです。どうせなら、
- 『〇番の二頭、ピークが高い!エベレスト!』
- と、実在の山で一番高いエベレスト(チョモランマ)に例えてあげるのもいいと思います。
- ケツアゴ
- 上腕二頭筋は、しっかり絞れると2つに割れて見えます。ピークのある二頭筋がしっかり絞れると、まるで外国アニメのヒーローのくっきり割れて存在感を主張する顎の様に見えます。
- これを称賛する言葉として、
- 『〇番、二頭がケツアゴ!』
- という言葉で表現します。
背中編
- 翼・亀の甲羅
- 主にバックポーズで使います。下の方から盛り上がった厚みのある背中は、亀の甲羅を思わせます。また羽が生えているかのように見えます。これらに例えて、
- 『〇番の背中!広すぎる!羽ばたいていけナンバー1へ!』
- 『亀みてえな背中だ!負ける気がしねえ!』
- 等の様に使うことが出来ます。これらは主に大円筋・広背筋を称賛する言葉ですが、個々人の筋肉の付き方によって翼と例えるべきか亀の甲羅と例えるべきか、使い分けもできると思います。
- 背中に鬼の顔
- 漫画「グラップラー刃牙」で使われて以来、背中の細かいカットやディテールを表現する言葉として使われてきました。マッチョ29の『ビバ!マッチョ』の歌詞にも出てきます。
- 実際に鬼が笑うような形になることはありませんが、
- 『〇番の背中バリバリ!鬼がいるぞ!』
- のように使えます。
- クリスマスツリー
- ある程度以上の筋量があり、絞れていると広背筋と下背部の境目の部分がもみの木のように見えます。これがクリスマスの時に飾るもみの木の様に見えることから、クリスマスツリーに例えられます。
- 『〇番のクリスマスツリーが深い!』
- のように使います。あまり、くっきりとはしてないですが、こちらの写真は昨年大会に出場した際の私の背中です。
肩(三角筋)
- 肩メロン
- 三角筋の大きさと質感を称賛する言葉です。肩に付いている三角筋は、全部・側部・後部の大きく三つの均等に分かれているので、バランスよく大きくなるとボールのような形で発達していきます。
- ボールのようなものは世の中に多くありますが、メロンが採用され、受け入れられているのは、
- ・ボールにはいろいろな大きさのものがあるが、メロンなら一定以上の大きさをイメージしやすいこと。
- ・三角筋のストリエーションや血管がメロンの葉脈を想起させること。
- などが理由になるのかなと思います。日体大の岡田隆先生がテレビで取り上げ、話題となりました。
- 『〇番の肩!メロン!』
- あるいは応用編で、
- 『〇の肩はメロンどころじゃねえ!バランスボール並みだ!』
- のように使います。
- 肩にちっちゃいジープ乗せてんのかい
- 2017年の関東学生選手権で使われTVなどでも紹介され話題となった掛け声です。三角筋や肩幅が大きく、ジープを載せることが出来るほどという意味です。
まとめ
以上、ボディビルの掛け声について解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
定番と面白い掛け声、どちらも是非生で聞いていただきたいのですが、よりも面白い掛け声を聞きいてみたいという場合は、社会人のコンテストでは中々聞くことができないため全日本学生選手権に行った方がいいでしょう。
しかし、学生の大会であっても掛け声だけではなく、”誰の何をアピールしたいのか、そのためにどういった表現をどのように使うのか”という観点で見ると色々な面白さがあることが分かってきます。
また、一度コンテストを見ておくと学生、男女限らず十分に楽しめるポイントも理解できるようになると思います。
掛け声について事細かくに説明してきたので、一度見ただけでは理解するのが難しいかと思いますが、もしもコンテストを観戦される機会がありましたら私の記事のことを少しでも思い出していただけると幸いです。
尚、今年の全日本学生選手権ですが、10月12日に福生市民会館で行われる予定です。
興味がある方は是非生の掛け声を体験してみてください。チケットの購入方法等は未定のようなのですが、もし公表可能となりましたらTwitterなどでお知らせします。
それではまたの機会に。インド料理に興味津々。でも絶賛減量中の駿(ハヤオ)でした。
「デカイ!」、「キレてる!」などボディビルの大会で飛び交う掛け声。近年では専門辞典、本が販売されたりYoutubeなどの動画にアップされたりと話題になっています。この掛け声の持つ意味、適切な使い方について解説します。